(声)重国籍禁止の規定見直しを

(声)重国籍禁止の規定見直しを
美術修復師 由川万帆(米国 46)

女子テニスの全米オープンで初優勝した大坂なおみ選手が注目されています。ハイチ出身の父と日本人の母の間に大阪で生まれ、3歳で家族でニューヨークに引っ越したという彼女。現在、日本と米国の国籍を持っているそうですが、日本選手として活躍した姿に心を打たれたのは私一人ではないと思います。

でも重国籍を禁止している日本の法律に従えば、今20歳の彼女は22歳で国籍を一つに絞らねばなりません。国籍を失うのはアイデンティティー喪失にも繋(つな)がっていきます。難しい選択になるのではないでしょうか。

私の12歳の息子も同様に日米両方の国籍を持ち、自分を「日本人と米国人の両方」と思っているようです。日本人であることをあきらめざるを得ない立場になったら、「多民族」のアイデンティティーを失うように感じるでしょう。世界には彼と同様、二者択一で迷うであろう日本の若者が何人いることか。

一方、欧米では重国籍を認めている国もあり、重国籍の人々は「多民族」であることを誇りとして生きています。国際的に活動する日本人が多い今こそ、重国籍禁止の規定を見直すべきではないでしょうか。

朝日新聞 2018年10月4日付