第二回口頭弁論期日報告

2018年10月9日(火曜日)

原告ら準備書面(1)陳述要旨
弁護士 椎名基晴

1 今回の準備書面と答弁書の関係

今回の準備書面では、答弁書での被告の主張に認否や反論をしていません。

被告の主張には、「国籍唯一の原則」の意味や複数国籍の弊害の実情など、根本的な部分の理解に大きな誤りが見られたためです。

このまま当方が被告の主張に逐一認否・反論を行うと、議論が散漫になり、錯綜する可能性が高いです。

そこで、当方としては、まず①議論の出発点を明確にご提示します。そして、②その出発点から立脚した原告の主張の体系と内容を具体的に明らかにします。その後に、③被告の主張に対して逐一認否と反論を行う予定です。認否・反論の際には、先ほど申し上げた原告の体系・内容との関連性をお示しします。

2 今回の準備書面の概要

 今回の準備書面では、先ほど申し上げた、①議論の出発点を御提示します。

準備書面では「複数国籍防止」の意味・内容を明らかにしています。具体的に申し上げます。

まず、各国が主権をもつことに基づく当然の原則である「主権尊重の原則」の意味を説明します。

次に、その「主権尊重の原則」から必然的に複数国籍が発生し、複数国籍の防止の徹底が現実的ではなく不可能であることを説明します。

そして、複数国籍の防止の徹底が不可能であり、複数国籍の弊害と言われていたものが実体の無いものであったり、解消されるなどしてきた中で、各国が、それぞれの国の独自の事情から、複数国籍を肯定したり、複数国籍防止を掲げたりしてきたことを説明します。被告が答弁書において例に挙げた中国と韓国も、それぞれの国の独自の事情からそれぞれの立法政策を採用したものであること、そして、我が国の国籍法の理解については、我が国の法制度と我が国の事情を確認していくほかないことをご説明します。

その後、我が国の国籍法の全体像を説明し、我が国の国籍法が複数国籍の防止の徹底をしていないこと、国籍法全体の中で11条1項だけが突出して不合理で特殊であることをご説明します。

今回の準備書面では以上のことをご説明します。

3 今後の原告の主張予定

①今回の議論の出発点を踏まえ、次回以降は、②原告の主張の体系と内容として、国籍法11条1項の立法目的を分析し、その立法目的と「本人の意思によらずに日本国籍を喪失させること」との関連性ないし必要性について検討します。その上で、③同条項の憲法との関係つまり違憲性について具体的に論じます。その後に、答弁書に認否・反論します。

4 原告7の岩村氏

今回、原告7の岩村さんが来ています。

岩村さんは、これからスイス国籍を取得しようとし、国籍法11条1項に苦しめられています。我が国への強い思いを一貫して持ちながら、なぜスイス国籍を取得する必要があるのか。国内にいる日本人にはなかなか知ることができない事情について、説明したいと考えています。

それでは、岩村さんの話をお聞き下さい。

以上

岩村さん、意見陳述

第二回・第三回口頭弁論期日提出 準備書面
(PDFファイル)