訴状概要

訴訟の概要

今回の訴訟は、日本人の両親から日本人として生まれ、日本人として育ち、海外で暮らしている日本人の訴訟です。

原告らは、日本への思いを強く持ちながら、海外での生活のため、また国内外での活躍の場を広げるために、外国の国籍を取得し、又は取得しようとしています。そして、それがために、国籍法11条1項により、日本の国籍を奪われ、又は奪われようとしています。原告らは、形式的に外国籍を取得したという理由で、日本の国籍を、自動的に根こそぎ奪われることになるのです。

日本国籍は、我が国の構成員としての地位を定めるものであり、日本国憲法上のあらゆる基本的人権の基礎となる極めて重要な法的地位です。

日本国民が、日本の国籍を選択しない、日本の国籍を離脱する、と決断をしているわけではないのに、日本国民から、日本の国籍を根こそぎ奪ってしまう。これは、国籍離脱の自由を保障する憲法22条2項に違反します。そして自己決定権・幸福追求権などを保障する憲法13条に違反します。

また、憲法14条にも違反します。生まれながらに外国籍を持つ日本国民などは、日本の国籍を選択したり、離脱したりすることについて決める機会があります。これに対して、原告らは、そのような機会が全く無いままに、自動的に日本国籍を根こそぎ奪われます。この点で、法の下の平等に反し、憲法14条に違反しています。

国籍法は憲法第10条によって憲法から委任を受けていますが、委任をした憲法の条項に違反することは許されません。

したがって、国籍法11条1項は違憲であり、無効です。

今回の裁判の特徴

次に、今回の裁判の特徴を申し上げます。

原告らは日本人であり、今回の裁判は「日本人」の裁判だということです。

原告らは日本人であるのに、日本の国籍が無いかのように扱われています。原告らにとっては、海外の生活のために取得する外国の国籍とは異なり、先祖や両親から受け継いだ日本の国籍が特別な意味をもっており、日本人である原告らは、日本国籍を持っていることの確認を求めています。

国籍法11条1項の問題点

国籍法11条1項には大きな問題点があります。

国籍法11条1項は、天皇主権を定める明治憲法のもとで、主権者ではない「日本臣民」の範囲を定めるものとして規定されたものでした。

しかし、今では、日本国憲法が制定され、我が国では「国民」が主権者です。明治憲法上の「日本臣民」とは異なり、「国民」は、国籍離脱の自由をもち、自己決定権を初めとする日本国憲法上の基本的人権が保障されています。それにもかかわらず、現在の国籍法11条1項は、日本国憲法との整合性をよく吟味して審議されることなく、修正されないまま、現在に至っています。

これにより、主権者である日本国民は、自らの志望によって外国の国籍を取得したという形式的な理由だけで、自らの日本国籍の離脱について判断する機会を全くもたないままに、日本の国籍を奪われてしまうのです。

そもそも、我が国の国籍である日本国籍と、外国の国籍は、全く異なり、外国の国籍を取得するかどうか意思決定をすることと、日本国籍を離脱するかどうか意思決定をすることは全く別のものです。

それなのに国籍法11条1項は、外国の国籍を取得する意思決定があれば、自動的に日本の国籍を離脱する意思決定もあるかのように扱ってしまいます。国籍法11条1項は、主権者である日本国民に自分の日本国籍離脱についての判断をさせずに日本の国籍を根こそぎ奪うという、はかりしれない害悪をもたらしています。